探偵と警備会社の違いは、探偵が「調べて報告する」仕事、警備会社が「その場で危害を防ぐ」仕事だという点です。探偵は公安委員会への届出制で、尾行や張込みによる所在・行動の調査を行い、警備会社は公安委員会の認定制で、身辺警護(4号警備)として付き添いや送迎による安全確保を行います。
「ストーカーの相談は、探偵と警備会社のどちらにすればいいのか」「両方に頼むと、何が違うのか」。どちらも民間の会社で、ホームページの説明も似ているため、違いがわかりにくいという声をよく聞きます。
この記事では、探偵業法と警備業法という根拠となる法律の違いから、それぞれが担えること・担えないこと、警察や弁護士との役割分担、調査と警護の両方を扱う会社という選択肢までを整理します。
この記事のポイント
- 探偵は探偵業法にもとづく届出制、警備会社は警備業法にもとづく認定制
- 探偵は相手の特定や行動の記録など「調べる」役割、警備会社は付き添い・送迎など「守る」役割
- どちらも警察のような特別な権限はなく、相手を取り締まる・処罰することはできない
- ストーカー対策では、警察・弁護士と組み合わせて使うのが基本
- 依頼前に、探偵は届出、警備会社は認定と4号の指導教育責任者を確認する
探偵業法と警備業法の違い
探偵業法と警備業法の違いは、規制する業務の中身と、営業を始めるための手続きです。探偵業法は「特定の人の所在や行動を調べて報告する業務」を対象とし、公安委員会への届出で営業できます。警備業法は「事故や危害の発生を警戒し防止する業務」を対象とし、公安委員会の認定を受けなければ営業できません。
| 項目 | 探偵(探偵業者) | 警備会社(警備業者) |
|---|---|---|
| 根拠の法律 | 探偵業の業務の適正化に関する法律 | 警備業法 |
| 業務の中身 | 聞込み、尾行、張込みなどで特定の人の所在・行動を調べ、依頼者に報告する | 施設・雑踏・運搬・人の身辺で、事故や危害の発生を警戒し防止する |
| 営業の手続き | 営業所ごとに都道府県公安委員会へ届出 | 都道府県公安委員会の認定(有効期間5年) |
| 表示の義務 | 届出を示す標識を営業所に掲示 | 認定を示す標識を主たる営業所に掲示し、ウェブサイトでも公表(小規模な業者などを除く) |
| 契約時の書面 | 契約前の重要事項説明書面と、契約後の契約内容の書面 | 契約前の契約概要の書面と、契約後の契約内容の書面 |
| 特別な権限 | なし。他の法令で禁止された行為はできない | なし。他人の権利や自由を侵害してはならない |
| 事業者数 | 届出数7,354件(令和7年末) | 認定業者10,949業者、うち身辺警護(4号)を行う業者699業者(令和7年末) |
事業者数は、警察庁「令和7年中における探偵業の概況」「令和7年における警備業の概況」によります。
2つの法律に共通するのは、どちらも民間の事業者に特別な権限を与えるものではないと明記している点です。探偵も警備員も、相手を取り調べたり、強制的に立ち退かせたりすることはできません。
探偵が担うこと・担えないこと
探偵が担うことは、相手が誰なのかを特定すること、相手の所在や行動を確認すること、つきまといの様子を日時入りで記録し報告書にまとめることです。担えないことは、相手に行為をやめさせること、相手を処罰すること、法令で禁止された方法で情報を得ることです。
- 相手の特定:差出人のわからない手紙や、見知らぬ人物によるつきまといで、相手が誰かを調べる
- 行動の記録:待ち伏せやつきまといが繰り返されている様子を、尾行や張込みで記録する
- 報告書の作成:警察や弁護士に見せられる形で、日時・場所・写真をまとめる
探偵業法は、調査の結果が犯罪や違法な差別に使われると知ったときは業務をしてはならないと定め、依頼者からも「違法な目的に使わない」旨の書面を受け取ることを義務づけています。相手の住所を突き止めて直接会いに行く、といった使い方はできません。
探偵に頼む証拠の記録と、自分で残す記録の分担はつきまといの証拠の残し方で解説しています。
警備会社が担うこと・担えないこと
警備会社が担うことは、警備業法の4号業務である身辺警護として、通勤・通学や外出に付き添う、送迎する、来客や面談の場に同席するなど、依頼者の身辺で危害の発生を警戒し防止することです。担えないことは、相手を拘束する、相手の行動を調べて報告する、警察官のような職務を行うことです。
| 警備業務の区分 | 内容 | ストーカー対策での例 |
|---|---|---|
| 1号(施設警備) | 住宅や事務所などの施設で、盗難などの事故を警戒し防止する | 自宅の機械警備(センサーで異常を感知し、警備員が駆けつける) |
| 2号(雑踏・交通誘導警備) | 人や車が混雑する場所で、事故を警戒し防止する | 一般には該当しない |
| 3号(運搬警備) | 現金や貴重品の運搬中の盗難などを警戒し防止する | 一般には該当しない |
| 4号(身辺警備) | 人の身体に対する危害の発生を、その身辺で警戒し防止する | 通勤時の同行、送迎、面談への同席 |
警備員の服装は警察官の制服と明確に区別できるものでなければならず、携帯できる護身用具も公安委員会の規則で制限されています。警備会社は「警察の代わり」ではなく、危険が起きにくい状況をつくり、いざというときに依頼者を避難させ、警察に通報する役割を担います。
身辺警護の依頼の流れや、警備会社を選ぶときの確認点は身辺警護とは?依頼できる内容と流れで詳しく解説しています。
ストーカー対策での警察・弁護士との役割分担
ストーカー対策での役割分担は、警察が警告・禁止命令・検挙で行為を止める、弁護士が警告書や法的手続きで相手に対応する、探偵が相手の特定と行為の記録を行う、警備会社が日常の安全を確保する、という形です。民間の探偵や警備会社は、警察や弁護士の手続きを補う立場で使います。
1
危険が迫っていれば警察へ
相手がそばにいる、押しかけられたときは110番。緊急でなければ#9110か警察署に相談します。
2
相手や行為がはっきりしなければ探偵
相手が誰かわからない、記録が足りないときは、調査で事実を固めます。
3
法的に止めたいときは弁護士
相手がわかっていれば、警告書の送付や接近禁止を求める手続きを相談します。
4
日常の不安が続くなら警備会社
通勤や外出、措置の前後など、危険が高まる時間帯の安全を確保します。
警察への相談の進め方はストーカー被害を警察に相談する流れで解説しています。
調査と警護の両方を扱う会社という選択肢
調査と警護の両方を扱う会社とは、探偵業の届出と警備業の認定をどちらも受けている会社のことです。相手の特定や記録と、外出時の安全確保を同じ窓口に相談できるため、状況が変わっても依頼先を切り替える手間が少なくなります。
ストーカー被害は、相手が判明して警察が措置をとった直後に危険が高まるなど、局面ごとに必要な対応が変わります。調べる会社と守る会社を別々に探す場合は、情報の引き継ぎや連絡の窓口を自分で調整する必要があります。
本サイトの執筆者が代表を務める株式会社誠・シークレット・サービス・コンサルティングは、警備業(東京都公安委員会認定 第30003860号)と探偵業(東京都公安委員会 届出証明 第30210266号)の両方の許認可を持つ会社です。公式サイトでは、ストーカー、DV、嫌がらせ、つきまといなどへの対応を、状況に応じて警察と協業しながら行うと案内しています。
両方を扱う会社を選ぶときも確認は同じ
両方の許認可があるかどうかは、探偵業の届出と警備業の認定を、それぞれの標識や番号で確認します。片方の許認可しかない会社が、もう一方の業務を外部に委託している場合もあるため、誰が業務を行うのかも契約前に確かめてください。
よくある質問
Q探偵と警備会社の違いは何ですか?
探偵と警備会社の違いは、探偵が尾行や張込みで特定の人の所在・行動を調べて報告する仕事、警備会社が付き添いや送迎などで依頼者の身辺の危害を防ぐ仕事だという点です。探偵は公安委員会への届出制、警備会社は公安委員会の認定制です。
Qストーカー対策は探偵と警備会社のどちらに頼めばいいですか?
ストーカー対策で探偵に頼むのは、相手が誰かわからない、つきまといの記録を客観的に残したいときです。警備会社に頼むのは、相手がわかっていて通勤や外出時の安全を確保したいときです。どちらの場合も、警察への相談と並行して進めるのが基本です。
Q探偵や警備員は相手を捕まえたり追い払ったりできますか?
探偵や警備員には、警察のような特別な権限はありません。探偵業法・警備業法はいずれも、他の法令で禁止された行為を許すものではないことや、他人の権利・自由を侵害してはならないことを定めています。危険があるときは、依頼者を避難させ、警察に通報するのが役割です。
Q探偵業の届出や警備業の認定はどこで確認できますか?
探偵業の届出は営業所に掲示された標識で、警備業の認定は主たる営業所やウェブサイトに掲示された標識で確認できます。標識には届出や認定をした公安委員会と番号が書かれており、不明な点は管轄の警察に問い合わせることもできます。
Q探偵が身辺警護をすることはできますか?
身辺警護は警備業法の4号業務にあたり、公安委員会の認定を受けた警備業者でなければ業として行うことはできません。探偵業の届出だけでは身辺警護は行えないため、警護も頼みたいときは警備業の認定があるかを確認してください。
出典・参考資料
- 探偵業の業務の適正化に関する法律(e-Gov法令検索)
- 警備業法(e-Gov法令検索)
- 警察庁「探偵業の業務の適正化に関する法律」
- 警察庁「令和7年中における探偵業の概況」
- 警察庁「令和7年における警備業の概況」
- 警察庁「警備業」
調査と身辺の安全確保をまとめて相談したい方へ
執筆者が代表を務める株式会社誠・シークレット・サービス・コンサルティングが相談を受け付けています。いま危険が迫っている場合は、110番に通報してください。
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